と思ったが。
いや、?ちがう。
女の子たちの目線はあたしじゃない、あたしの隣でポッケに手突っ込んでぼーっと立ってる優くんだ。
いつの間にか優くんはかっこいいと校内で人気になっていたんだ。
そんなのに気づいていなさそうな優くん。こいつ罪な男だねえ。
「それでは選手の皆さんはスタートの位置についてください」
放送が青い空に響き渡る。
うわァ…ついに来てしまった、この時が。
絶対勝てないし、勝とうとも思えない。
あたしたちが走る距離は100m。
個人種目だから速さとか順位とか、もはやもういいやって感じ。
怪我だけはしないように。

