「あの…松本くん」

4人でわちゃわちゃしていると、2人のクラスメイトの女の子が優くんの隣に立っていた。

その呼びかけに優くんは顔を上げる。

なんだろ…?

鮎川さんと狭山さんだ。

2人は「そっちが言ってよ」と言いあってなかなか本題を出さない。

「…なに?」

優くんがそう問いかけると、鮎川さんは、

「あの…ロッカーの上にあるダンボール取れないから取ってくれない?」

と言った。

「…いいよ」

優くんは嫌な顔一つせずに立ち上がって笑顔になる女の子2人についていった。

確かに優くんはクラスで一番背が高い。

178だっけな…?

175の涼くんはヤキモチを妬いたように「なんでぃなんでぃ、あいつだけぇ」とつぶやき、ぷくーっとほっぺを膨らませていた。

そんな姿に笑いながら、教室の隅っこにいる優くんの後ろ姿を見つめる。

高いロッカーの上に乗ってるダンボールを背伸びもしないで軽々と持ち上げる。

それを受け取ろうとした女の子たちに「重いから持ってく」と、廊下に持って行ってあげていた。

…優しいんだなぁ。

そんなことを思ったりする。