私はいつの間にか瞳に浮かんでいた涙を堪えるように、コウを睨んで言った。
「…っコウが好きなのは、私じゃないの!?」
…目が、見開かれる。
私は燃えるような羞恥に駆られ、教室を飛び出した。
後ろから、「麻佑!」と声がする。
…なに、言ってんだ。なんだあの、こっぱずかしい台詞は。
何様のつもりだ。まだ、返事もろくに考えていない分際で。
全力で廊下を走り、一年の教室がある一階から、階段を駆け上がる。二階の廊下に足を置いたところで、息をついた。
しかしどうやらそんな暇はないようで、階段の下から「麻佑!」というコウの声がした。
えっ…早っ!
「コウ!?うわ、足早くない!?キモいんだけど!」
思わず、本音がこぼれる。さすがキャプテン候補。コウは「うるさい」と息を切らしながら、階段を上がってきた。や、やばい。



