「さっき吉野さんに、もらったんだ。『今まででいちばんおいしくできたから』って。すごくおいしかった!」
…コウと同じクラスの、吉野梨花ちゃん。
とにかく可愛いと有名な子だ。そのほんわかとした雰囲気だとか、優しい性格だとか。
小柄であること以外、私とは全く共通点のない女の子である。
「……へえ。それは、よかったね」
落ち着け、落ち着け。
そう思うのに、出てきた声は思った以上に低く、自分で驚いた。
私の心の中を知ってか知らずか、コウは嬉しそうに言う。
「今日の練習、がんばれそう」
…本当に嬉しそうに、笑う。
へえ、そっか、それは、それは、なによりで。
皮肉な呟きが心の中でいくつも浮かんで、本当に可愛くないな、と思った。



