それからも、ひたすらトレーニングに取り組む。
時折聞こえてくるバッシュの音と、試合を見ている女子の「コウすごっ!」という声に、目をつむった。誰か、耳栓ちょうだい。
昨日のコウの笑顔が、脳裏に焼き付いて、離れない。
…なんだかもう、どうにかなりそうだ。
*
翌日の放課後。
委員会の話し合いが終わり、私は教室で荷物をまとめていた。
もう教室には、誰もいない。でも案外早く話し合いが済んでよかった。
ふぅ、と息をついた時、廊下から足音が聞こえた。
「あれ、麻佑?」
開けられた扉から見えたのは、コウの姿だった。
コウはなにやら口をもぐもぐさせながら、こちらへ近づいてくる。
「麻佑、部活行かないの?」
「委員会だったの。あんたこそ、行かないの?てゆーか何食べてんの?」
まだ制服のままのコウは、ごくんと飲み込んだ後、「クッキー」と満面の笑みで言った。



