まんなかロックオン



それからも、ひたすらトレーニングに取り組む。

時折聞こえてくるバッシュの音と、試合を見ている女子の「コウすごっ!」という声に、目をつむった。誰か、耳栓ちょうだい。

昨日のコウの笑顔が、脳裏に焼き付いて、離れない。

…なんだかもう、どうにかなりそうだ。





翌日の放課後。

委員会の話し合いが終わり、私は教室で荷物をまとめていた。

もう教室には、誰もいない。でも案外早く話し合いが済んでよかった。

ふぅ、と息をついた時、廊下から足音が聞こえた。


「あれ、麻佑?」

開けられた扉から見えたのは、コウの姿だった。

コウはなにやら口をもぐもぐさせながら、こちらへ近づいてくる。

「麻佑、部活行かないの?」

「委員会だったの。あんたこそ、行かないの?てゆーか何食べてんの?」

まだ制服のままのコウは、ごくんと飲み込んだ後、「クッキー」と満面の笑みで言った。