そんな事件があったんだ。自分とは無関係だと思って聞き流していたのに。まさか、自分がターゲットになるなんて。

やだっ、襲われるっ……!


咄嗟に大声を出して誰か助けを呼ぼうと声をあげようとしたけれど、それは。


男が次に発した言葉によって失ってしまった。

「君、さっきの黒猫だよね!?」


「…………は?」


叫べなかったのではない。素で聞き返したのだ。暗い道。月すらも出ていない今日は、ぽつんと近くに立ってある外灯だけが頼りで。


その頼りない灯りを頼りに

目の前の人に目を凝らす。