バスの走る音にかき消されてしまいそうなそんな音さえ、

私は聞き取って、反射的に振り返ってしまう。


陽太を見れば、すこし、いいづらそうな顔をしていて。


あぁ、ここで言われるのかな。


振られるか。そう思って見つめる。


「……今日は家に帰っておいで」




少し困ったように笑う陽太。

あくまで私の言ったことには触れない。


なんて言ったらいいのか分からなくて。でも、陽太の言った「家」がどこのことなのかはしっかり分かって。



黙って頷いたまま、踵を返して校門へ向かった。