だって、あたしはあっくんにそんな顔しかさせてあげられない。

ヒドイ女なんだよ。

「ううん、桃は優しいよ。これで僕、ちゃんと桃のこと諦められそうだから。……ありがと、桃。大好き」

「あたしだって、大好きだよ……!これからも仲良くしてね…?」

「もちろん。幼なじみとして、これからも桃と一緒にいるよ」

そう言って、あっくんは今までにないほどの綺麗な笑顔で言った。

あっくん、大好き……

「じゃ、教室戻ろうか?」

「えーしばらくここにいよーよ。ね、あっくん」

「じゃあ次の授業サボっちゃおうか。どこか行こ?」

「おぉー!いいね♪」

あたしとあっくんは顔を見合わせて笑った。

「どこ行こっかー」

「んー、校内探検でもする?」

「楽しそう!あたし、まだ全部行ったことないんだよねー」

「決まりね。じゃ、行こっか」

「うん!」

揃ってふたりで空き教室を後にし、校内探検を始めた。

まだ昼休みということもあって、人が多い。

ゆっくりと歩きながら、あたしはあっくんと話していた。

「ねー桃ってさ、まだお化け屋敷苦手なの?」

「……うん。無理」

「そっかー。今度一緒に入ろうね」

「今無理って言ったよね!?」

「あはは」

あっくんが可笑しそうにあたしを見る。

「あ、桃男装やめないの?」

「うん。卒業するまではやめないよ~」

「そんなこと言って、すぐにバレそうだよね」

「え、あたし今まで女だってバレたこと一度もないよ」

残念なことにね。
あたしはどっからどう見ても男にしか見えないようで。

地味にショックなんだけどね…。

「そうじゃなくて、ドジ踏んでバレそう。そうだなー、例えば転んでカツラが取れちゃうとかね」

「またまた~あり得ないってそんなこと……っギャッ!?」