「梓ちゃん、こっちだよ。」

気付けば、燐はもうふかふかの白い皮張りみたいなソファに座っている。
レンさんに名前を呼ばれ、私は燐の隣に座った。

「何飲む?」

「…ビールで。」

燐は了解、と微笑むとデザートとか頼みだした。
まぁ、金は持ってきてるし大丈夫かな…。

私は楽しそうにレンと話す燐を微笑ましく思いながらソファの端に寄る。
端に居れば、変な奴等に気づかれる事も無いだろうし。

私は軽く欠伸をするとソファの背に顔をうずめて眠り始める。
早く、こんな店から出たい。
目立つのは、嫌いだ。

今思えば、この私の行動が目立ってたんだ。
他の女性客はホストが来れば擦り寄るし、甘えるし。
上目遣いで話しかけて、楽しそうに笑う。
ココでは、それが普通で。
私の行動は変なだけだった。

「どうしたんだ?」

一人の男の声で顔を上げる。
レンさんでは無い事は確か。レンさんよりも、少し声が低くて男っぽいし。

「…何でも無いですけど。」

見上げると、これまた派手な男が一人。
胸のプレートには『光輝』って書いてあった。