襖を素早く開け体を滑り込ませるように入ると閉めた。
やっと開放され肩で息をすると、原田が苦笑しながら「すまねぇな」と侘びを入れた。
すぐに正座をして、頭を下げる。
「あの場所じゃ、誰に聞かれるかわからねぇ。仮にも局長の話(こと)だ。他の隊士が耳にして騒ぎになっても困る」
「!」
原田はそこまで配慮していたのだと分かり、自分の発言がいくら遠回りとはいえ良くなかったと反省する。
原田に促されて頭を上げると、真剣な眼差しと目が合った。
「お前が聞きたいこと、はっきり言ってみろ」
「……はい。私は今まで芹沢局長のしてきたことを知りたい。新選組を嫌っているのは芹沢局長がいるから…そんな気がしたので」
「新選組という名はつい最近頂いた名でそれまでは、壬生浪士組と名乗っていた。その頃は芹沢さんが今よりひどくやっていた時期でもあってな。浪士の首を町中に曝したり、商家を焼いたりしたこともあった。
悪名は無名に勝る、だってよく口にして色んなことをした。
そのせいか、壬生浪士組を名乗り悪事を働く奴らが出てきちまってな……恨まれることが多くなった。新選組となった今も、名を変えただけでやってることは何も変わってねぇと、恨んでいる人が居ても不思議ではないな。
今は、必死に足掻いている最中だ」
芹沢鴨という1人の人間を一部分でも知れた気がした。
今の幹部は尻拭いを沢山してきたのだろう。土方が目くじらをたてる理由も近藤派である以外にこのことがあるからなのか。土方は近藤を上へと上げたい――それを邪魔するかのような芹沢の行動が気に食わないのは当然だ。
