-アイネ-





「一度刃を交えていますから、あなたの実力は分かっています。二対一なのに刃をいちいち受けるなんて、弱い人ならすぐに殺(や)られていますよ。人々を騒がせるためとはいえ、苦しかったでしょうに」



「もし万が一、この男らが逃げ出しては一人だと対応しきれぬ。2度手間も防げる。しかし、まだ稽古が足りぬようだ、この程度で息があがるなんてな」










もう直に新選組がやってくる。人々が騒げば御所の護衛など重要な職務をこなしている場合を除いてすぐにその場に駆けつける。




だからこそ、刃の音を響かせるようにしたのだ。哀音にとっては捕縛のことを考えれば迷惑でしかないけれど。





「私への配慮はしてくれないんですね」




「この場に来るまでは、終わらせることが出来ると確信したからだ。時間が出来れば逃げることが可能だろう」





「可能な限りの配慮はしたと。…自分勝手な方です」







大柄の男にも縄をかけ始める前川の背中に言う。







「大柄(こちら)の男を殺さなかったことに対しての礼だよ。本来ならもっと時間をかけようと思っていた」









「生憎、新選組からお礼をもらうつもりはありません。もらったなんて、思いませんから」










刀を袂へしまうと、そっけなく歩き始める。





一杯食わされた――悔しいながらも面白い男だと思った。


いつの間にか気を張り詰めていたものがなくなり、普通の会話をしていて共に戦うとこんなにも変わるものかと思いながら借家へ戻る道を歩いた。