「反吐が出るわ」
短刀の鞘で刃を受け止めそのまま流し鞘を捨てると、男が驚きながらよろけて倒れてくる。
力任せに刀を振る相手には引いて戦え。刃向かえば力で負ける。
よろけた男の懐に入り、刀を体につけるとひいた。鮮血が飛び散り、男の顔が苦しみに歪む。
そんなのに構っていられないと、哀音は素早く通り過ぎると背中から刃を向ける。このまま斬れば終わりだ。
そう思ったら、男が振り返りぎりぎりで受け止めた。
―――かぁぁんっ…!刀がぶつかり合う音が響く。
前川が二人の男と戦っているため、ぶつかり合う音は先程からずっとしているが、この音を聞きつけた人々が騒ぎ出すかもしれない。
受け止められた刃を跳ね返すように刃を押されたために体勢が崩れる。そこをついてくる男。
刀を使って受け止めると間合いをとった。
雪が少しずつ強くなっているのを肌に感じながら、走って近づくと男が刀を握る手に力を入れたのが分かった。この男は力む癖があるらしい。
