「それでは、裏切り者になると」
「哀音が本当の事を話すのなら、私も応えるという意思表示でもある」
「………分かりました、私も情報は欲しい。…ですが」
振り返らぬまま、目を閉じてすぐ開ける。
3人程の人の気配がしている。視線はまとわりつくようで、吐き気がした。
顔だけを前川に向けて、懐に手を入れた。
「今はその話を保留にするしかなさそうです」
「!」
前川もすぐに周りに目をやり始めた。
哀音の尾行にも気づいたほどだ、この気配に気づいたのだろう。
「そういえば、新選組から抜け出そうとする者は切腹なんですよね。どうやってここまで?」
「組長に話は通して許しを頂いた。哀音に会おうとしているとは言わなかったが。使いに出た際落し物をしたから取りに行く、とだけ言った」
「―――どうしますか?」
短刀の柄を握り、足に力を入れる。いつでも周りの人間も哀音も戦える状態だ。
前川も刀に手をかけられる位置に構え、腰を低くした。
