-アイネ-



町を歩いていると、大和屋跡が見えてきた。人はもう住んでいないため、暗い様子だ。




近づいて中を覗いてみる。古い木の臭いが鼻についた。










何もない、暗いだけの木の建物。主人がいつもにっこり笑みを浮かべて商売をしていたと誰が想像できるだろう。




どこか、懐かしい主人だから、ここで飾りを買っていた。





平太は主人が何かあった時のためにと知り合いの所へ預ける手筈を整えていたらしく、あの一件の後すぐ連れていかれた。






自分は哀音になった。はずなのに、平太を助けるようなことをした。







罪滅ぼしだったのか、それとも幼時の記憶がそうさせたのか。














「師、匠……」






「―――愛音」









懐かしい名を口にしたのと耳にしたことのある声が呼んだのはほぼ同時だった。