「かしこまりました。ただもう一つ私はある条件を出しています。それでもいいと言うなら演奏致しましょう」
「条件?」
「お店に来ている客の名簿を見せてもらいます」
声を潜めてはっきりと言った。
小椋が驚いた様子で、返事をしない。最初は誰だってそうだ。だが、そこまでしてまで哀音の演奏を求めてくれる人でなければ、演奏の意味はない。
返事をしない小椋に歩き出そうとすれば、小椋は哀音が思っていたよりはっきりと「分かった」、そう告げてきたのだった。
小椋に連れられて店までやってきた。中には美しい着物が飾られていて、息を呑む。ひだまりに似た色の素地に橙色の花が描かれている。
いや、これは――――
