「私の三味線をもしお気に召されたなら、是非にお呼びくださいませ。50文でどこででも演奏致します」
いつもの文句を並べて演奏を始める。
ただ静かに丁寧に調べを奏でると、人々の顔がほころぶのを感じた。
「哀音は男ではなく女だ、間違いない!」
「前川、どんな報告したんだ」
数人の男―――新選組隊士がこちらに近づいてくる。
興奮しているのか、何人かの男の声は大きく聞き取れ、内容が分かる。
"哀音"の話をしていることから、昨晩の男達だ。
構わず弦を弾くが、近づいて足を止めたのに気づくと目線をちらり、と隊士にやる。
集まっていた人々の半数が去り、小椋を含む半数がその場に留まった。
「この女…昨日の!」
睨みをきかせて一歩を大きくして寄ってくる隊士に、哀音はやっと演奏をやめた。
