「やめてしまわれるのですか」
集まっていた人の1人で、見た目は若そうな微笑みを浮かべる男性が惜しむ声をあげた。
身にまとっている衣はとても立派で、生地がしっかりしている。おろしたてではなく、着慣れてる様子から、衣を扱う大店の主人だろう。 腰に刀はなく、人の良さそうな顔は商売人だ。
「今日は、上手に演奏出来ませんから」
「とても素晴らしい演奏や。可能ならばもっと聞いていたいと願うほどに」
「殿方は見たところ、大店の主人でしょう? 島原にも通いなれているでしょう。私の拙い曲より、そちらの方がよろしいのでは?」
「あんさんの演奏は、まるで草木が音を奏でているようだ。島原も良いが、あんさんも引けを取らない」
『 の演奏は、とても心地よいわ』
『心地よい…?どんな?』
『そうね……草花が自然に奏でる音のようかしらね』
「ありがとうございます」
