雪は全てを白に包む。だけど染められてしまったら、もう戻らない。
哀音の中の雪は真っ赤に染められ、白に戻ることはない。
からん、からんっ…鈴は虚しく音をたてた。
ふと懐紙に包まれていた金平糖を思い出して取り出すと、先ほどこぼしたせいで一粒しか残っていなかった。
「………」
口に含んで音をたてて食べると、妙に懐かしい気分になる。
「………甘い」
思い出に浸ることも、懐かしい気分になることも、哀音には必要ない。
"哀音"はただ人を殺めるためだけに、存在意義を唱える。
泣くことも、喜ぶことも、笑うことも、怒ることも"哀音"はしない。
口に残る甘さに切ない気持ちになりながらも、哀音は歩き出した。
足跡は振り続ける雪に消され、消えた。