「!! 愛、音………?」






目を大きく開いて、刀をほんの気持ち引いた。










人の足音が近づいてくる。







「邪魔だてすれば、今度は殺す」










否定も肯定もせずに言い残すと、背を向けて走り出した。




前川は追おうとして、足が動かないことに気づいた。雪がまとわりついている中、痣が浮かび上がっている。






刀背打ちの時、脇腹に斬りこんだ後刀を下げたのを思い返した。脇腹の痛みが大きく気づかなかった。









去り行く背中は小さくなり、追えない前川は見ていることしかできない。





とうとう、見えなくなった。











しばらくすると人がやってきて、それが仲間だと分かると、その場に倒れた。








「倒れている奴を運び、残りは情報収集と状況報告してくれ」






「はい!!」





新選組隊士が動き始めるのを見てから、色が変わった雪を手ですくった。









「……一体、何があったんだ…?」







「哀音だと思いますか」







「斎藤はどう思う」











「哀音ならば、全員殺されるはずです。ですが、刀背打ちで確実に気を失う所を突いていて、かなりの手練が行ったものかと。前川の腕は確かです」










副長である土方は斎藤の見解に納得しきれていなかった。







血が数滴雪に滲んでいた程度で、ほとんど流血はみられない。








何が目的か見当もつかず、副長の頭を悩ませた。