力強く一歩を踏み出せば、真っ直ぐに刀を突いてきた。
短刀で受け止めると、大きく交わる音が響いた。容赦なく次々に斬りこんでくる様に、前川の覚悟がはっきりと伝わった。
重い一打に短刀を持つ手が震える。
力では必ず男に負ける。そんなこと、火を見るより明らかで、覚悟をしている相手というのは気合いもあるためにさらにやりにくい。
息が震え、吐く息もゆらゆらと揺れた。
好機は自分自身で作るしかない。
相手は一瞬の隙すらも作らない。
短刀を握る手の力を少しだけぬくと、前川の刃を受けるのをやめて避けた。
予想外だったのか、ほんの少しだけ体勢を崩したのを見逃さず、脇腹に刃の向きをかえて突きを入れた。
うめき声をあげて、膝をつきそうになりながらも姿勢を持ち直す前川。
