「女?」
酔っていた男達も気づいて、全員が足をとめた。
相手は新選組に身を寄せる隊士だ、見くびりすぎていたのかあっさりと見つかった。
哀音は月が雲に隠れて互いに顔が見えないことに心底ほっとしていた。
「お聞きしたいことが、ありまして」
艶やかな声を出し、女らしく微笑する。
「我らに聞きたいこと、とは?」
誤魔化しが通用するほど、甘くはないはずだ。
哀音は自然に、唇から音を発した。
「芹沢鴨は、どこに居られますか?」
「!」
酔っていた男達が顔をしかめる動きをしたのが、暗がりに伺える。
酔っていない男は冷静で静かに答えた。
「芹沢局長とどういう関係の方でしょう。身の元を明かさない方に、局長の居場所を教える事は出来ません」
真面目な男だ。思っていたより時間がかかりそうだ。
「そこをどうか。私はただの町人に御座います。名乗ったところで、お分かり頂けないでしょう」
「堅苦しいな、お前は。べっぴんさんだし、連れていったら局長喜ぶぞ」
酔っているにしては上手くろれつが回っている男が、酔っていない男(真面目な男)に絡む。
肩に置かれた手を払いながら、真面目な男は不機嫌な声を出した。
