-アイネ-



指がかじかんで、弦を弾くことが難しくなってきた頃、三味線をやめて息をついた。




数人が島原大門から出て現実に戻る道を通っていく。







「大和屋の件でこんなに報酬がもらえるとは思わなかったな」





「組長のはからいで島原で酒が飲めるなんてな」







大和屋――その一言で哀音はあとをつけることを決めて、三味線を背に歩き出した。



おぼつかない足取りの男達は、話から伺えるに新選組の隊士。



酔っているなら上手くやれば、芹沢鴨の元へ行ける。



足を早めて近づこうとしたが、一歩でとどまった。1人、酔っていない人がいる。





大和屋の話をしている以上は顔は見られていることを覚悟しておかなければならない。そうなると、動きにくい。










男数人は角を曲がっていく。人通りの少なくなっているその道で、行動を起こさなければ、今回は何も出来ないだろう。









足を早め角を曲がると、目を見開いた。