「愛音(あいね)、今日はほんにありがとう。お客さんも満足や」 「いえ、こちらこそお呼び頂けて嬉しいです」 男は愛音と呼ばれた彼女をよんだ、京で名の知られる商家で、今日は贔屓にしてくれている偉い方をもてなすために、料理茶屋に呼んでいた。 以前町で三味線を弾いている愛音に声をかけ、愛音は承諾し演奏に至った。 「あんなに素晴らしい演奏してはるのに、町で演奏するんはもったいない」 「そこまで買って下さるなんて嬉しい限りです」