-アイネ-




野次馬が遠ざかっていった後、荒らされた跡を残す大和屋はひどい有様だった。


目を伏せると、平太も静かになる。



そっ、と手を離すと平太に目をやった。









平太は、涙をぬぐって大和屋を見つめていた。







目を背けずに、受け止めようとしていた。






「…平太、どうする」







"哀音"が問う。




「僕は………」







言葉を濁して続けれない。









憎いなら憎いと言えばいい。悲しいなら悲しいと言えばいい。






二度も悲しみを体験した平太に、それくらい許されるはずだ。









「我慢せずに言ってごらんよ。誰もいないんだから」