大和屋内から砲の弾や書類等が運び出される。
主人が新選組に連れられていこうとして、振り返る。
「やめて…縄なんかかけないでよ!!!おっちゃんは!!!」
「お嬢さん、ほんにありがとう。平太、……すぐ、戻る…さかい、いい子にしとるんよ」
それだけ言うと、そのまま連れていかれる。
「おっちゃん!!おっちゃん!!」
悲しい叫びが響き渡る。
哀音はこの場面を知っている。悲しみが取り巻いて、憎しみが生まれる、この場面を。
「おっちゃんっ…」
追おうとすると、哀音が腕を掴んで離さなかった。
振り切ろうと暴れるが、哀音の力は強くて振り払えなかった。
「離してよ、お姉ちゃん!!」
「離したら、平太くんはどうするの。追って、また旦那さんの哀しい顔を見るの」
「だって…だって…」
暴れるのをやめて、俯く。
そのまま主人の背中は見えなくなった。
