握りこぶしをつくり、きつく睨んで声を発しようとした時。
「前川、勝手な行動はやめてくれない」
走って寄ってきたのは沖田で、前川と呼ばれた彼は頭を下げて謝罪した。
哀音を見るなり、困ったような楽しむような笑みを口元に浮かべる沖田に、哀音は思い切り背を向けた。
「屯所に戻るよ」
「はい。……お大事に」
前川は人の良さそうな笑みを向けると羽織をひるがえして、沖田のあとに続いて歩いていく。
あの人達は。
芹沢鴨の指示のもと動いている。人を守る、助けることが仕事なんて、嘘だ。
人殺しの人斬り集団。
間違った正義を振りかざす、愚かな集団。
握りこぶしにさらに力を込め、静かに小さくなった背中を見つめた。
