目線を一に移し、それだけで名を教えろと言うと、彼も名乗る。
「新選組3番組組長、斎藤一」
「満足ー?で、名前」
「……愛しい音の愛音です」
「愛音、ね」
哀音は静かに礼をすると、三味線を背にやり歩き出した。
新選組組長というと、幹部にあたる。沖田、斎藤は局長を知っている。
芹沢鴨を探し出すには近づくのも手だ。
足を止めて振り返り。
「あぁ、もし私の三味線を気に入って下さったのなら、是非にお呼び下さい。50文でどこででも演奏致します故」
二人は振り返らず背中は無言で遠のいていく。
周りにいた人々はこそこそと話をしている。哀音に対してか、新選組に対してかは分からないけれど不快だ。
早い歩きで進むと、島原の大門が見えてきた。中からは音楽が聞こえる。
大門の見えるその場所で隅に腰をおろすと、聞こえてくる音楽に三味線の音を合わせた。
――――ベンッベンッ…
哀音が弾く三味線の弦の音も響いて、風が島原に音色を運んだ。
