「逃げるのはやましいことがあるから?」
総司が冷たく言い放つ。
ふぅ、と聞こえるくらいのため息をつくと笑みを見せた。
「いきなりそんなことを言われても。お客様では無いようですし、場所を変えようと思っただけです。三味線を奏でるだけで"哀音"と疑われてはかないませんね」
「総司、行くぞ。女の言う通り、三味線奏者だからと構っていては」
「哀音が女だって騒がれてたらこいつを疑うくせに。一、思わないの?こいつが哀音なら後の仕事も楽になるんだよ」
食い下がる総司に一は渋い顔をする。
面倒な人に関わってしまった。この男達からあの訛りは聞かない。
ならば哀音がここに留まる意味もない。
そう思ったのに。
「名前は?僕は沖田総司。新選組1番組組長だよ」
「新選………組…?」
『新選組局長の名……っ!?』
芹沢鴨と口にした際、確かに男はそう言っていた。
