-アイネ-




「お嬢さん、もう行かはるんどすか」





「失礼します」







挨拶もそこそこに、足早に大和屋を出た。


頭の中で何度も何度も繰り返される、あの日のことを。



短刀で喉をかき切って死んでしまおうか。



いくらでも出来たことをできずにいるのはやはり、哀音となったから。




適当な所で腰を下ろして、三味線を構える。




誰も分からない。誰も知らない。誰が誰を殺したかなんて。








「…っ」








―――ベンッ!!


いつもより強く弦を弾くと、息を大きく吸って。


目を閉じていつもの様に演奏を始めた。

全てを壊したい。その一心で。




品の欠片もない演奏に、怪訝な顔をして通り過ぎる者もいる。



そんな中、複数の人が足を止めたのが分かる。


京の人々の足が不自然に遠ざかっていく音が耳に入り目を開けた。










「………………」