その言葉に驚きもせず彼女は頷いて、ごく自然に一定の距離をとった。刀に手をかけ、互いに見据えながら抜いた。




哀音が腰をおとし戦闘態勢に入ると、雪を思い出した。







―――――初めて刃を交えたあの日から。

ただの人斬りでなければ良かったのにとどこかで願った。



彼女と出会ったのが恩師ではなく、近藤局長や土方副長であったのなら、全てが変わっていたのだろうと。











「いくぞ」










1歩を踏みだしてひと突き。すばやく反応され受け止められると、目の前から彼女が消える。


その数秒後、かぁんっと刃のぶつかり合う音が闇に響く。







蹴りが来る前に1歩下がって間をとって刀を振る。それを再び受け止められ、口元に笑いを含ませる。














「体は鈍っていないか」





「無論。あなたも少しは成長したようで」













しばらくの間、刀の交わる音が響いていた。



――――そして。













「っ、はぁっ………」