舟が江戸について、幹部の後に続いて舟から降りる。




怪我人は既に江戸におり、前川のように動ける人間は一番最後の舟で江戸にやってきた。








鳥羽・伏見の戦いでは監察方の山崎と、幹部の一人井上を失った。




幹部の顔は少し暗いものの、平隊士にそれが伝わらないようにと常に引き締めていた。







組長の沖田も労咳を患い療養していることもあり、不安要素は多い。









しばらく歩いて奉行所に着くと、怪我人の世話をする平隊士の一部と治療をしてくれている甲玄先生が忙しく動いていた。









「前川、他の隊士を連れて手伝いを。今まで動いていた奴を休ませろ」






「はい」





「しばらく奥には近づけさせないように」









二つ返事をすると直ぐに平隊士を連れて中へと入る。









哀音のことや芹沢のことなど、幹部と接触する機会が多くなり"前川達"を知ってもらえたからか監視するためか、他の隊士をまとめる仕事をもらうようになった。










幹部もひとが少なくなって、まとめるのは大変だと思うし、力になれるなら嬉しいと思うので良いのだが。












「休むように副長からの伝言だ。後は私達がやろう。体調が悪いものはいるか?」






「前川、鈴木の顔色が悪い。別室に連れていく」






「わかった、頼む。休んでいる者の部屋に1人、人を待機させるのだが、中野、お前に頼んでいいか?」







「任せろ」











中野は鈴木を連れて別室へと向かっていった。



その後も指示を出しながら、世話や刀の手入れをし1日を過ごした。






幹部は長い事話し合いを重ね、それから一週間後。原田と永倉が脱退することになった。

互いに譲れないものがあり、けれど離れても誠の下に戦うというのは変わらないと、原田はそう言った。









「元気でな」




「今までありがとうございました。……お気をつけて」







「相変わらずかてぇなぁ~。…左之、行こうぜ」






「あぁ。じゃあな」








原田と永倉を見送り、奉行所内に戻ろうとして足を止めた。











歩いてくるひとりの女。









「哀音……?」








「久しぶりですね」









哀音はそう行って、笑みを浮かべた。









「何故、……怪我は」







「話したいことはたくさんありますが、ここで話すのは少し躊躇われますね。丑の時、近くの川原でお待ちしています。それでは」







哀音は以前と変わらない笑みをみせると、再び歩いて去っていく。







そこへ、斎藤がやってきた。







「前川、すぐに広間へ」