髪をひとつにまとめ、"哀音"の格好に着替える。
あれから若先生と話し、新選組の元へと行くと伝えた。
「新選組を含む幕府軍は、おそらく負ける。それがどういう事かわかるよね?」
「わかっています。……でも、木山と江藤を殺れるのは、もうここしかない。哀音を哀音として生かし、終わりにしたい。中途半端に生きればきっと、後悔しかないから」
若先生は、師匠に似たねと言ってから頷いた。
怪我のこともあるため、4日後の今日までは傷を癒すように言われた。
傷を治しながら若先生の指導のもと、動いて感覚を取り戻す。強い薬を飲んで傷がだいぶ癒えたところでやっと、江戸に行くことが許されたのだった。
三味線を背にして、若先生が用意してくれた馬の元へ行く。
「…若先生」
馬を撫で、水をやっている若先生に声をかけた。
「…はい、これを」
振り返った若先生が短刀を差し出す。
お礼を言って受け取る前に、頭を下げた。
「っ……ありがとうございました」
親不孝者でごめんなさい。
心の中で呟いて、しばらくの間頭を下げる。
「桔梗。そう呼べる時がもう一度来るなんて、思わなかった。会えて嬉しかったよ。
さ……哀音」
哀音。そう呼ばれて顔を上げ、短刀を受取った。
懐にしまい、馬を引いて境内を出る。
「あぁ、平太には会っていかないのかい?」
「文を書いておきました。それで十分です。……それでは」
馬にまたがり一気に山を駆けていく。
一度も振り返らずに手綱を握り締め、朝日を浴びながら京を出た。
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