目を開けると、灯がゆらりと揺らめいている様子が目に入った。
体を起こそうとすれば、痛みに顔をしかめる。
腕と腹には包帯が巻かれ、布団の上にいる自分の近くには、おじさんと呼ぶくらいの男が寝ている。…寝顔には見覚えがあった。
「…こ、こ…」
かすれた声を発したと同時に、男は目を覚ました。
「起きた!」
大きな声に耳を押さえると、ごめんごめんと謝りながら嬉しそうに笑った。
「目が覚めたんだね、桔梗」
「っ……若…せんせい…?」
「覚えていてくれて、良かった。もう5年、6年かな、君と別れてから」
柔らかな布を桶の水に浸し、しぼって哀音の額に乗せる。
「なんで……」
「僕は医者だからね。寺で怪我をした人の治療にあたっていたんだけど、…男の子が弟がいないときたものだから、探しに行ったんだ。それで見つけたら弟が、助けてくれたお兄さんとお姉さんが怪我してるって言うし、行ったら桔梗が倒れてて。
男の子なんか「お姉ちゃんお姉ちゃん」って興奮したまま名前を何度も呼んでたよ」
師匠が護身術を教えてくれていなかったら、桔梗を助けれなかったと、優しく笑って、背後にある襖(ふすま)に目をやると、声をかけた。
ゆっくりためらいを感じさせながら、襖が開かれると、顔を覗き込ませる男の子。
