原田が槍を振り回し、永倉の隊か進んでいく。
前川の姿を探して、傷を負った隊士に肩を貸している彼を見つけた。
陣としている建物に入っていく。
10番組が攻め込み、新政府軍が10番組と共に遠ざかったところで、哀音は動き始める。
「早く逃げるんだ、ここは危ない」
一本裏に入った道に、浅葱色の羽織を見た。
幼い男児がしゃがみ込んでいて、その子に声をかけている。
そこに見回っていたのか新政府軍が3名、浅葱色の羽織を見て向かっていく。
そして刀を抜いた。
「!早く」
隊士も刀を抜き、構える。
構えを見る限り、剣に長けているわけではなさそうだ。本人も分かっているようで、肩に力が入っているのがわかる。
――――かぁぁぁんっ!新政府軍の一人が仕掛けてくる。
そこへ2人、3人と加わり防ぐのに精一杯になっている。
1人が振るった刀が隊士の腕を斬りつけ、血が飛ぶ。
「ぁ……あぁ………ぁ」
幼子がその様子を見て声をあげた。途端、哀音は短刀を取り出し素早く近づくと、2人を斬りつけて刀を落とさせた。
『うあ…ああっ……』
楓が泣きながら桔梗を見つめたあの顔と重なったからかもしれない。
すぐに幼子に向かって膝をつき、微笑む。
