人数、武器等圧倒的に不利な状況なのは幕府軍ではあるものの、信念を貫く強い意志も幕府側が持っていると感じる。
長州を含む新政府軍が勝つ……木山、江藤が生き英雄の一人として称えられるようなことは、あってはならない。
哀音が実質の幕府側にいるのは、それがあるからだ。
「私は新選組のもとへ戻る。必ず連絡はしてくれ。……死なせたくない」
「分かってる。貴方についてる以上は、きちんとする。貴方も死なないで下さいね、わたしを生かしておきながら死ぬことは、許しませんよ」
「分かってるさ。……ではな」
前川が借家を出た後、哀音も出る。
京の人々は安全面を考慮して避難を始めている。平太も、小椋も楓も、逃げていることだろう。山の方に寺があり、皆そこに避難しているはず。
「………」
青い空を見つめて思う。新選組が行くところまで行ったら、どうなるのか。
それ以前に行くところまで行けるのかも、分からないけれど。
「………哀しいな」
この時代は。この時代の人間は。
命を奪うことで、何かを変えなければならないなんて。
それでも生きる理由と、変えなくてはならない理由があるんだろう。
「武士というのは、分からん」
前川に新選組の陣を教えてもらった時に聞いた、新政府軍の陣を確認して、動き始めた。
