「1つお願いが」












「何だ?」







「わたしが、貴方につくことは変わりません。けれど、新選組にはわたしがつくとは言わず、あの協定を承諾したと……伝えて欲しい」














哀音が前川につくと言えば、前川の身に危険が及ぶかもしれない。









それは哀音の望むことではないし、此度と同じことを繰り返すことにも繋がる。











「土方なら意味をすぐに理解するだろう。幹部にも出来れば知って欲しくない。
あくまで敵―――そういう認識の方が皆、強くなれるはずだ」












「分かった。局長、副長にはそう伝えておく」











そう言って前川は鞘に収めている刀をそのまま腰からとり、哀音に短刀を出すように言った。











短刀を取り出すと、前川が鞘から刃を少しのぞかせたので同じようにした。














―――かちんっ









小さな音をたてて、刃がぶつかった。










「武士の真似事だが………約束をする時に、こうするらしい。本物ではないから、無効かもしれぬが」











「そういうの、いいんじゃないか。約束、したからな」