「2人を見つけ出して、殺す。それは変わらない」
手ぬぐいで拭いきれなかった雨が、髪の先から落ちる。
「このままどっちつかずで生きていこうとすれば、同じ事が幾度となく起きるだろう。桔梗は、それを望むか?」
「……いいえ」
「ならば、私につかないか。新選組にも長州にもつかぬ。ただ私を裏切らないと、それだけで良い。それがあれば少なくとも新選組は、お前を手の内に入れようとはしなくなる」
前川は静かにいう。
前川が新選組に属している以上、政に巻き込まれる可能性はあるけれど、新選組や長州ほど巻き込まれることはないだろう。
前川は哀音を裏切らないし、哀音も応えれば良いだけ。
「2人の情報収集も手を貸そう。独断でこんな事言うのは良くないが」
苦笑して哀音に一歩近づいた。
