-アイネ-









再び苦無が飛んできて、沖田や藤堂が対応しきれなかった藩士が斎藤を襲う。









男が指を鳴らすと、藩士らが土方の周りを取り囲む。男は哀音の元に来ると、刀を納めた。










「くっそ…」








沖田が土方に加勢するが、時間はかかるだろう。






再び、歩きだそうとした――その時。













風が横を通った。小さな雨粒が、肌について。











「何のつもりだい………平隊士」









男の前に前川が立っていた。刀の先は、男の首元。






返り血が隊服に滲んで、不自然なまだら模様になっている。鋭い目に、がっしりとした肩。








新選組1番組隊士、前川達がそこにいた。











「哀音は、渡さぬ。新選組の元に来なくとも良い……私の元に、来い」