「原田!新八!組をまとめて戦え!平助、総司はここにいる奴らを!斎藤、お前は俺と共に哀音を追うぞ」
土方の指示はすぐに通った。皆が迷うことなく動き始める。
「待ちやがれっ!!!」
「哀音、殺れるかい?」
「…可能なら遠慮したいな。わたしが恨みを持っているのは、新選組(こいつら)ではないからな」
「恨みがない人間には優しいんだね?」
「わたしとて人の子、感情だってあるさ」
男が足を止めて、刀を抜く。
土方、斎藤が構える。
男は一歩踏み出すとすぐに土方の間合いへと入った。
――――かぁぁぁんっ!!
「哀音はこちらにつくよぉ……それは変わらない……」
「変わる。その為にここに、来たんだからっなっ!!」
土方と男が刃を交えている間に、斎藤が哀音に近寄る。
「させないよぉ……?」
土方に目をやったまま斎藤めがけて、苦無(くない)を投げた。
刀ではじいて、身を守る斎藤。
「貴方達にも、信念があるのでしょう?」
声を発すると、斎藤が背を向けたまま肯定する。
「わたしにも、信念がある。これは信念を貫き通す為に譲れないこと。新選組とは、行けません 」
「………新選組の元にくる必要はない」
