「副長、哀音を連れて参りました」
「すぐ行く。近藤さん、哀音がついたようだ」
「うむ……致し方ない」
斎藤が局長の近藤勇と副長の土方を呼びに行っている間、哀音は通された広間で待っていた。
平隊士がいる処とは少し離れているようで、幹部と雑用係しか見なかった。雑用係も哀音を広間に通したあと、姿を見せなくなった。
しばらくして、凛々しい顔つきの男と土方が入ってきた。近藤勇とは初めて顔を合わせるせいか、じっと見つめてしまう。
「そんな怖い顔しないでくれ。なに、傷つけるためにここに来てもらった訳じゃない。君は客人だ、乱暴なことはしないよ」
笑うと人が良さそうに見え、歳もそこそこいっているが明るい人だと思った。
「客人だと仰るのでしたら、それなりの迎えをして頂きたいですね。無理を強いられて、ここに連れてこられましたから」
「それは済まなかった。……局長の近藤勇だ」
座布団の上に座り、挨拶をした。
「…哀音です。話というのは何でしょう」
「朝敵となった長州藩が、哀音を欲しているという情報が入った」
