「そうですが、何の御用ですか」
「話がある。屯所まで来てもらいたい」
「…………… 」
斎藤が一定の距離を保って、言葉を発した。
「新選組の羽織りをまとったあなた方と、屯所に行く所を見られたら、この先の仕事に支障をきたします。後ほど屯所に向かいますので、今は………」
「副長より、俺たちが連れてくるようにと命を仰せつかっている。それに、あんたがくるという保障はない」
沖田も斎藤も、すぐに刀を抜けるように少しだけ、片足を後退させている。
力づくでも連れていくということは、何かあったということだろう。
「それでは見張りをつければよろしいでしょう?少なくとも今は、あなた方と行くつもりはありません」
身を翻そうとし、足を止めた。首元にきらめく刃がある。
「……よろしいのですか、町人に刃を向けて」
「総司」
「拒否権っていうの?そういうの、ないんだよね。こっちも暇じゃないんだ、行くよ」
今の状況で戦うことも、逃げることも叶わないだろう。
小さくため息をついて、静かに頷いた。
首元から刃が離れ、斎藤が無言で行けと言い、歩き出す。
屯所まで向かう間、沈黙していた。
