「私が手を貸してほしいと頼んでいるのは、哀音だ。桔梗ではない」
彼の返しにゆっくりまばたきして、目を合わせた。この人は、やはり嫌いだと思いながら、口元に笑みを浮かべた。
「こうしないと、哀音とはやっていけないだろう?……哀音の答えは?」
「私は少なくとも哀音として、あなた方に手当をされお礼を言った。断れる立場ではないのに―――一度でよいのか?」
「一度の方が裏切りも、手を抜くこともないだろう?それに、一度だけと言えばお前が承諾すると、確信をもっている」
ここで手を組むと言えば、土方も哀音を捕縛することはない。哀音を手の内に入れ、同時に恩を売る――そう分かっていて頷くのは癪に障るが。
「ならばこちらも、そちらの意に添えるように、条件を提示しよう。
新選組幹部からの一切の指示は聞かない。もちろん、これは手を貸した時に事が成功するようにするための提案だ――断っても良い」
「……分かった。それで良い」
