桔梗が反応してそちらへ視線をやると、師匠は鋭い目を向けて沈黙した。
林に姿を現したのは武装した男たち。何十人いるかは分からないが、人数はいる。
「何の用だ、てめぇら。その紋からすると、わしに用があるんだろう?」
「主からの命により、殺す」
相手の一人が、刀を抜いて皆も続いて抜いた。
昼間の太陽に、刀が反射して煌めいた。木の葉に積もった雪が溶けて水となり、雫を地に落とす。
「桔梗、逃げろ。桔梗の足なら逃げきれる」
木刀を構えて背に桔梗を隠しながら、言った。
師匠は強い。負けるわけ無いと思うのに、足は震え冷や汗がふきだしてくる。
懐にある短刀に手をかけて、男達を葬ることが出来るのなら、それが1番良い。だが、実践はしたことない。
この場で死ぬことも、あり得る。
「娘ですか。娘が気がかりなら、ご安心下さい。一緒に逝かせて差し上げますよ」
「この娘が気がかりだあ?わしがどういう人間か分かってて、それを言うか?」
「……そうですね」
「行け、桔梗。生きると言ったなら、生きるためにどうすべきか判断しろ」
後ずさり、走ろうとすると師匠が動き始めた。
