-アイネ-






「こうして、わたしは短刀の使い方を教わりました。今も思いますが、自分勝手な理由で短刀を手にしたんです。そうやって、自分勝手な思いで動かないと、生きていられなかった」







「師匠という方は、何故武術を、剣術を知っていたのだ?」









灯が揺れるのを見、短刀にゆっくり触れた。









「後から聞いた話てすが、かつてお上に仕える武士だったそうです。ですが内部を知りすぎたが故に、色々なものに巻き込まれ、立場を追われたと。

そのせいで、……師匠は命を落とすことになったのです」







前川が驚き口を開いて、閉じた。







過去に囚われているのに、過去は過去だと言わんばかりの話し方に、矛盾を覚える。





でもそれを言ってしまえば、もう話してはくれないと思い口を閉ざす。









「師匠と若先生と、5年の時を共に過ごしました。5年で、終わることになったのです。


2人と会って、五回目の冬。師匠に林の奥で稽古をつけてもらっている時でした」









――――――*――――――







林の中で、短刀に見立てた木を削ったのを振る音が鳴る。






いつもより奥まった所で、師匠と桔梗が戦う。








師匠の力は強いが、対処の仕方は使い方の先生に教えてもらった。




力を抜いて下がり、脇腹にいれるが、師匠も桔梗の首に木を当てていた。








「はっ……流石、ですね…っ、師匠……はぁっ」




「桔梗もなかなかだ。もっと体力が欲しいところだが」






ゆっくり離し、息を整える。







「短刀は持っているか」






「はい。師匠から頂いた物なら今、持っています」







「木より本物の方が重いからな。次はその練習をするぞ」








師匠が半月ほど前にくれた短刀は、桔梗の手に驚くほどしっくりきて使いやすかった。






使い手の先生の元でも、この短刀を使った稽古をしてもらっている。






「師匠、今度花染めの仕方教えて頂けますか?」





「着物に使うのか」







「はい。着物の選び方、着こなし方、髪飾りの選び方付け方、立ち振る舞いは教えて頂きました。
あとは、自分で染められると良いなと思って」







「わかった、準備しておこう」








そんないつもの日常に不似合いな、大勢の足音が聞こえた。