「だから自分の身を守る術は一応知ってるし、二人だけで動けるんだ」
自分の身を守る術を知っている。
自分の中で反芻して、手に力を入れた。
「おじさん、わたしをここに置いてくださいませんか?」
若い男は年取った男と顔を見合わせた。
それから、理由を尋ねてきた。
「お礼をするために。あと、自分の体を守る方法を、武術を教えてもらいたいです…!今のまま探しに行っても、何も守れないから……それはおじさん達に申し訳ないです」
それから長い沈黙のあと、年取ったおじさんが口を開いた。
「ここに置いてやるからには、しっかり働いてもらうぞ」
頭をがしがしと撫でられて、目尻に残っていた涙が頬をつたう。
「……武術、本当に知りたいのか。護身術でも、人を傷つけることは変わらん」
真剣な声音で言われ、怖いと思ったけれど。
真っ直ぐな視線を向けた。
「もう、守られるのも何もできないのも、嫌なんです」
全て、壊された。もう戻らない。だからもう壊されないように。
力が欲しい。
