「これでも医術を学んだ者だからね、安心して。とりあえず医術の道具がそろっているこの小屋に来たくて、三河国から離れたんだ」
「……助けて下さり、ありがとう、ございます。あの……7つの小さい子っ、これくらいの背で、髪飾りがついた子見ませんでしたか…!?」
動かせる限りで手を動かし、楓の容姿を伝える。
「わしらが村で見たときは、桔梗と……亡くなった二人だけだった」
返ってきた言葉に肩を落とす。
父も母も、亡くなった。突然優しい温もりを失って、寂しさが胸をいっぱいにした。
父、母、楓に会いたい。また色んなことを教えてもらって、また笑って過ごしたい。
楓はまだ7つなのだ、誰かが傍にいてやらないと。そしてあの怪我を誰が治してくれるのだろう。
「桔梗、あそこで何があった」
年をとった男が、問うた。
言葉にできなくて、代わりに涙を流した。声を出さないように、唇を強く噛む。
夢でないと分かっているのに、夢であって欲しいと願ってしまう。何度願おうと、体に出来た痛々しい傷と、哀しい記憶は消えない。
あのことを口に出すのは恐ろしかった。
「桔梗、今いくつだい?」
「……10、です」
「10か、思っていたより幼いな。傷が治るまで、ここにいるといい。それとも、身を寄せる所があるならそこまで送ろう」
「わたし、……」
