-アイネ-






「!起きた!起きましたよ!!」




「ううっ……」






大きい声に耳が痛くなり、声をあげた。





それに気づいた若い男の人は、すぐに口を押さえやってしまったと言わんばかりに眉根を下げた。










「ごめんよ、大丈夫かい?」






「馬鹿野郎、けが人の傍らで大きな声出すんじゃねぇよ」






「すみません、嬉しくてつい」





何がなんだか分からなく、とりあえず体を起こそうとして鋭い痛みが襲い耐えられなくて、後ろに倒れる。





若い男の人が支えてくれて、体を起こすことが出来た。












「名を、教えてくれないかな」








「……桔梗」






「桔梗、気分は悪くない?傷はまだ痛むと思うから、安静にするんだよ」






若い男の人が人懐こい笑顔を見せてそう言った。




桔梗はしぼりだすように声を発する。








「ここ、は……どこ、ですか……?」








「ここは、駿河国(するがのくに)だ」









少し年をとった男が低い声で答えた。




駿河国は富士の嶺が見える、母と父が一度だけ行き、とても美しいと話していた所。










でもどうして、三河国から駿河国に……?









「怪我をして倒れているのを見つけてな、この若造の知り合いの元で、手当をしながらここまで来た。」