反射的によけようとして、体を捻らせたが反応が遅れた。
「っ……!」
声も上げる暇もなく、そのままよろけて川に倒れ込んだ。
体中に水を感じながら、負傷したところを押さえようとする。
水からでなければ、多量の出血で危なくなる…!
力の入らぬ手と足で川から出ようとするが、動けなかった。
川は浅く流れも人が流される速さではないので、難しくないはずだが体が鉛のように重かった。
「哀音!!!」
前川の声が微かに聞こえ―――そこで意識を手放した。
「哀音!しっかりしろ!」
哀音をおそった藩士らを斬り絶命させると、哀音を抱き上げた。
力なく腕は垂れ、ぐったりとしている彼女に人斬り哀音の姿は見られなかった。
上着をかけてやり、とめどなく血が流れ出る傷部分を止血した。
「前川…!」
土方と沖田、永倉が駆け寄ってきた。周りを見れば藩士はいない。
「そいつを連れていくぞ」
「捕縛、するのですか?」
「手当と回復を待ってから、決める」
「はい。……1つお願いがございます」
腕の中にいる彼女の体温を感じながら、続けた。
「私に見張らせて下さい」
「……哀音が逃げたら、お前の責任だけど」
「承知しております。ただ、どうしても伝えたいことがあるので、お許しを頂きたいです」
「どうします、土方さん?」
しばしの沈黙のあと。
「分かった。だがまだ信頼しきってる訳じゃねぇ。哀音と逃げることも考えられる。
自分がしたことを、忘れるな」
「ありがとうございます」