「あんたは、長州に恩があるから参加するっちゅー…」
「はい。本当なら本人にお礼をしたいのですが、手がかりが何一つとて御座いません。ですから、皆さんに協力しようと」
「しっかり囮として動いてくれんと困るばい、頼むぞ」
「もちろん、皆さんの役に立てるよう頑張ります。ただ……いらぬ心配をかけてしまったようで、申し訳ありません」
己の名にふれ、眉根を下げる。
気に病むことはないと慰めの言葉を受け止め、礼を言う。
8日経つまで、長州藩士と親睦を深めるために努めた。
その8日間は表立った行動は控え、ただの町人として三味線の演奏も抑えた。
新選組が大坂にやってきたという話を耳にしてから3日後―――長州の情報担当が哀音を訪ねてきた。
静かに頷いて、決められた場所へと足をすすめる。
合図は、近くに流れる川に石を投げるか、刀の音。
息を潜めて古那屋を見つめる。情報担当から聞いた話だと、幹部は土方、沖田、永倉の3人。
哀音の顔を知っている永倉に近づけば反応を示すだろうし、疑っている沖田も永倉が反応すれば動くだろう。
「永倉さん、飲みすぎです」
「酔ってねぇっつの〜」
哀音の待機場所近くに向かってくる新選組。
永倉に肩を貸す平隊士を見ながらゆっくりと前に立った。
