「もう、冬は終わったからね。哀音は冬でしか生きられないから、いなくなったんだよ。
暖かさや暑さは彼を苦しめる。でも、やっつけてはいないから、また寒くなったら出て来るわ。
その時は、私が懲らしめておくよ」
「お姉ちゃん強いんだね!すごいね!」
平太の笑顔に曖昧な表情を返すと、養母が平太を呼んだ。
名残惜しそうに手を離していく彼に、またね、と告げる。
次会う時にはまた、大きくなっていることだろう。時の流れを感じずにはいられない。
見送ってから、そっと耳の傷に触れた。
「…………」
哀音の季節は終わった。再び季節が巡るか、冬に値する寒さがなければ動けない。
息を吐いて、大坂の宿へ向かった。
宿へは宴の際に演奏をすることで安く泊めてもらえる約束だったので、長居出来そうだ。
そうして、情報収集を行った。
「長州藩のお方なら、北の方にある那須屋で話をしてはるよ。あんた、話聞いたんか」
「話、ですか?」
「違うんか」
「わたし、長州藩の方に助けて頂いたことがありまして。その際落し物をされたので届けたく聞いたのです」
「そうやったか」
「話というのは?」
商人はちょっと寄れというように、手招きをした。
長州の話はおおっぴらにできないからだろう。
商人に寄ると、声を潜めて話始めた。
